INTERVIEW先輩就農者の声
田村市栽培農作物 キクラゲ、椎茸 など
19年間培った
工業のノウハウを
農業へ
田村市でキクラゲ、椎茸を栽培する「移ヶ茸(うつしがたけ)」の安田悟さん(43)。安田さんは、19年間勤めた自動車部品メーカーを退職し、2020年に故郷である田村市で新規就農しました。自動車産業の現場で培った徹底した合理化の考え方を、余すところなく農業に転換していくスタイルは唯一無二。そんな安田さんの目から見た農業の可能性や今後の展開について伺いました。
ひとりじゃ何もできない
「自分の力を試したい」ということで就農されましたが、実際農業をやってみていかがですか?
いやぁ、これがね~。「自分ひとりじゃ何もできない」ってことがわかった。ここ、太字でデッカく書いといて(笑)。前の会社では中間管理職だったんだけど、これがきつい訳よ。従業員の給料を上げるために仕事をとってこないとダメ。でも仕事をとってくると「なんでこんな仕事とってくるんだ」と言う人もいて……。もっと自分のためにだけ働きたい、と思って農業に入ったけど、一年足らずでみんなのために働いたほうがいいなって気づいた。
まず、研修先の師匠に言われたのが、「言われやすい人間でいなさい」ってこと。なんか違うんじゃないのかなぁと思っても、言いづらい人っているじゃん。そうじゃなくて意見を言いやすい雰囲気がある人になること。そういう人みたいに振る舞えば、間違いを教えてもらえるし、いろんな情報も集まってくる。それに僕ひとりで上手くいったって何にも面白くない。例えばこの前テレビに出た時に、僕もキクラゲを使った料理はできるけど、お世話になってるカフェのマスターに頼んで出演してもらった。収録が終わった後はみんなで盛り上がってさ。人と一緒に成功したときの方が楽しいよね。今日の取材も誰かが僕を紹介してくれたわけで。大事なのは人とのつながり。ひとりじゃ何もできないよ、本当に。
取材日:11月16日
取材・文・写真:成影沙紀