INTERVIEW先輩就農者の声
川内村栽培農作物 椎茸、キクラゲ、ヒラタケ、マイタケ、ナメコ など
ひたむきな親の背中を
追いかけて
福島県川内村でキノコを栽培する「遠藤きのこ園」。椎茸を中心に、キクラゲ、ヒラタケ、マイタケ、ナメコなどを育てています。現在代表を務めるのは二代目の遠藤雄夫さん(46)です。川内村役場職員だった遠藤さんは震災後、帰還してキノコ栽培を再開した両親の姿に影響を受けて家業を継ぐことを決意。遠藤さんの心を動かしたもの、そしてこれからの展望を伺いました。
大きくて高品質なキノコ作りにシフト
心配していた風評被害はあったのでしょうか?
やっぱり震災前に比べて30%ぐらい価格が落ちました。栽培の過程で4回も放射性物質検査をしていましたが、それだけやってこの結果です。ただ、2016年に私が家を継いだ頃には価格もだいぶ戻ってきていました。震災前の8割ぐらいでしょうか。 それから現在までジワジワ価格が回復してきているんですが、震災前に比べると生産資材がすべて高騰しているという新たな問題があります。
生産資材というのは、例えば菌床に使うおが粉ですね。震災前は隣の田村市都路(みやこじ)地区から原料となる木材を仕入れていたんですが、原発事故で森林が汚染されてしまったので福島県産のおが粉を菌床に使うことができなくなってしまったんです。秋田県産に切り替えましたが輸送費もかさんでかなり高くなってしまいました。今は県の補助等(←可能であれば東電の保証金はカットできればと思います)があるのでいいんですけど、それがなくなると大変になってしまうので、今のうちに価格を戻して利益が取れるキノコづくりにシフトしていきたいと思っています。
利益が取れるキノコ作りというのは具体的にはどういうことでしょうか?
一つにはうちのオリジナルブランドである「ひたむき椎茸」の生産、販売です。震災後に私が作ったブランドで、一般の椎茸に比べて肉厚で軸が太い椎茸です。何があってもひたむきに椎茸作りに向き合う両親の姿から名付けました。適切な品種の使用、菌床に与える刺激の工夫、厳しい選別をして良質な椎茸を生産し、直接東京の飲食店に販売しています。
震災前はJA出荷だけだったので、うちの椎茸は県内約30軒の生産者のものと一緒になって「愛情しいたけ」という福島県ブランドとして流通していたんです。でも震災後はやはり、「原発被災地でもこんなに良いキノコを作って売ってるんだよ」ということを知っていただきたくて、“川内村の椎茸”としてPRするために「ひたむき椎茸」を作りました。数年間やってきて、ある程度ひたむき椎茸が知られてきたので、今度は「愛情しいたけ」の品質を底上げしていきたいなと思っています。
「愛情しいたけ」は県内の農家さんの椎茸が集まったものですよね。遠藤さんだけが頑張っても質の向上は難しいのでは?
実は「愛情しいたけ」の中には、うちだけが出している規格があるんです。大きくて高品質の椎茸で、百貨店などで扱われて良い評価をいただいています。その実績をもとにJAの方でさらに営業をかけてもらっているところです。新しい規格で「福島県産の椎茸は良い椎茸なんだ」ということが知られれば、県内生産者の中にこの規格の椎茸を作ってみようという人が増えていくはずです。
取材日:9月17日
取材・文・写真:成影沙紀